2006年07月01日

アメリカという国家の立場で中国を見ると... 『 これが中国の国家犯罪だ 』

アメリカ人である著者が、アメリカという国家の立場で書いた本。
中国の現状については、膨大な資料を集めて書いてありそうなので、
書かれてある状況の通りなのかもしれない。
しかし「だからこう対処しなければ」というところには、
ここにも「アメリカの主義の押し付け」があるのか、と感じてしまう...。


これが中国の国家犯罪だ
著者名:ジャムヤン・ノルブ(著)
     戸根由紀恵(訳)
出版社:文藝春秋
出版年:2006.01
ISBN :4163677704


中国の政治体制はもちろん民主的ではない。
共産党による一党独裁。
だから、アメリカのような民主主義国家の常識では考えられないことが常に起きている。
それが死刑の乱用、囚人からの臓器摘出、チベット、新疆地区の独立運動への弾圧など...
要するに、アメリカから見れば中国では「人権」が侵害されていると。

その他いろいろな理由もあって、
中国製品の非買運動をしよう、というのが本書の主旨。

しかし、中国は2000年以上前から皇帝による統率で動いてきた国。
20世紀に入って、いくつかの民主化の動きもあったが、
今のところ全てつぶされ、また共産主義路線をとったために
余計に民主化の動きは抑えられている。

問題は、こうした中国の歴史的な背景を一方的に批判しても
効果がない、ということ。
2000年以上前から(いろんな国が成立、滅亡を繰り返してだが)、
アジアの大国として皇帝の権威を振りかざしてきた国。
そんな国家が、自国の1/10ぐらいの歴史しか持たない、
しかも移民で構成された「人工の大国」の言うなりになるとは到底思えない。

中国もいずれは民主化するかもしれない。
でも、おそらくそれには何十年という時間が必要かも。
そもそも、東アジアにおいて民主主義がきちんと機能している国はあるのか?

韓国: 軍事クーデターが起きたときもあり、必ずしも完全な民主化とも言いがたい。
北朝鮮:言わずと知れた独裁国家。最高指導者が世襲、国はほぼ鎖国のような体制。
    まるで江戸時代の日本のよう。
    でも国名は「朝鮮民主主義人民共和国」なんだけどな...
日本: 憲法上は民主主義国家。
    でも本当に民主主義は根付いているのか?
    政治家も二世議員がやたらと多いし。
    ちなみに衆議院選挙の投票率は2005年で 67.51%、2003年で 59.86%。
    (参考)http://www.nikkei.co.jp/senkyo/200509/elecnews/20050911d1e1100v11.html
    地方の選挙なら大抵はもっと投票率は低いだろう。
    太平洋戦争敗戦後、GHQが民主主義を押し付けた、
    言い換えれば民主主義が転がり込んできた国。
(間違いがあれば指摘してください)

中国に国家レベルでの制裁にしろ、民間の不買運動にしろ、
それを引き換えに民主化を要求してもおそらく「今は」無理。
中国(今の中華人民共和国)がそんな国家に成熟するのはまだ先の話、にも思えてくる。
あまりアメリカの圧力が通用するとは思えない。
いずれなるのか、もうなっているのか、
中国がアメリカに対抗しうる国家になる可能性はある。

あくまでもアメリカの視点で書かれた本。
そういう意味では、翻訳済みとはいえ日本人が読んでもピンとこないかも。
ちょっと話はずれるけれど、文中に注釈がやたらと多くて、ちょっと読みづらい。
(前書きに敢えてそうしたと書いてあるのだけれど)

では日本から見た中国はどうか?
日米安保があるからといって安心している場合ではない。
現に、南西諸島の尖閣列島の領有権を主張するわ、
尖閣列島付近の地下資源を掘削をはじめるわで、
沖ノ鳥島(日本の最南端)に対して「あれは島ではない、岩礁だ」というわ、
じわじわと日本に迫りつつあります。

日本に対していきなり軍事行動を起こすことはないと思う。
(そのときはアメリカ軍が動がざるをえないだろうから)
でもじわじわとなしくずしで島をかすめとる可能性はある。

本書でも触れられている、中国の拡大政策。
中国が「本来自分達の領土だ」と主張している範囲をご存知ですか?
今の中国の領土に加えて、
台湾(一応挙げました)
朝鮮半島
沖縄を含む南西諸島
シベリア極東部とサハリン
モンゴル
カザフスタンの東部
カシミール地方(インド、パキスタンとの国境区域)
ネパール、ブータン、インドの一部などヒマラヤを囲む地域
ビルマ(ミャンマー)、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、
マレーシアなど東南アジアの大陸部ほぼ全て
これだけを「本来自分達の領土だ」と主張しているのです。

(参考)
徹底検証!中国・韓国の歴史教科書

日本も他人事ではない。
南西諸島を、地下資源を名目に少しづつ剥ぎ取りにでてくる可能性は十分ある。
これ以上先を越されないように、海底の調査を先にしておくこと。
そして十分警戒に当たること。
中国に進出したらコストがかからず安くついたなんて喜んでいる場合ではない。

有史以来、中国は日本をずっと「属国」か「格下の国」とみていたという
事実は忘れてはいけない。今後の同じような政策で日本に対するだろうから、
それに対抗できる体制をとっておかなければならない。
(単純に)自衛隊を強化しろと言っているのではなく、
政治家もそのつもりで考えて欲しい、ということ。

韓国も反日などといっている場合じゃない、ような気がする。
朝鮮半島統一どころか、北朝鮮をそっくり中国に持っていかれる可能性だってある。

大国はいくら政権が代わっても「大国」でありつづけようとする。
そのためには多少の犠牲はいとわない。そういう国なのか。
そういうことを感じさせる本でした。
posted by Silent Bells at 02:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評ついでに言いたい放題
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