民営化の前の国鉄に問題があったのは確か。
しかし、分割の仕方、民営化のやり方は本当に正しかったのだろうか?
JRのレールが危ない 著者名:安田浩一
出版社:金曜日
出版年:2006.04
ISBN :4906605125
民営化後、少なくとも本州の3社は利益を計上するようになっている。
都市部では電車のダイヤも便利になり、スピードアップもした。
新しい車両もどんどん導入された。
しかし、内部ではコスト削減が叫ばれ、
社員がどんどん減らされていく。
その影響をまともに受けているのが、運転の現場、
そして保線工事の現場。
幹部の会見とか、ホームページの記述とは裏腹に
次々と人員が削減され、作業が下請けに丸投げされる保線現場。
手抜き作業の指示を平気で出す発注元(JR関連会社)。
作業を下請けに丸投げするために、保線に関するノウハウがJR職員には
溜まらなくなっている。
また、下請け業者も同じ人が何十年も作業を続ける、とは考えにくいため、
未熟な作業員が作業をしていることになる。
利益追求のために、「安全性」が確実に犠牲になっていることを、
JR東日本と、JR西日本の例を挙げて紹介している。
本書の内容はこういったものです。
この手の問題、別に鉄道会社に限ったことではないことに注意。
他にも当てはまる企業はあるはずです。
道路公団が民営化されました。
当然コスト削減の一環で人員削減が行われるはずです。
ETC導入も、会社から見れば人減らしのための設備なのではないか。
航空会社もコスト削減のために、人員整理、
整備部門の子会社化、外注化を進めている。
全日空はまだマシ、といわれているが、
それでも一部にトラブルを起こしつづけている機体がある。
いや、公共交通だけでないかもしれないですね。
国内の企業全般がこういう流れになってきている、という感じもする。
昨年度の決算で、過去最高の利益を上げたと発表した企業もあるが、
その実態は、正社員を可能な限り削減し、
作業の多くを契約社員、外注にさせるようになった。
またその一方、残った正社員には今までよりはるかに多くの
負担がかかるようになった。
その上での会社の利益。
それで本当に景気が回復したといえるのだろうか?
社員削減、外注化は短期的には利益を出すだろうけれど、
長期的に見れば、決していいこととは思えない。
実際の作業を行っているのは契約社員や外注先の人員。
作業のノウハウは契約社員や外注先に一時的にたまるだけ。
元の会社に作業のノウハウが溜まらない。
会社内でノウハウを伝承していく仕組みがなくなった今、
「熟練工」という人々は、今後出てこなくなるのだろうか?
会社内には「熟練工」は必要ないのだろうか?
一度決まったらその指示に従わなければならないマニュアル、
柔軟な運用を妨げるマニュアル。
マニュアルにさえ従っていればいい、というのでは技術は育たない。
日本の会社経営者は、10年先、20年先が
見えなくなっているのだろうか?
それとも、自分さえ儲けられればいい、とでも思っているのだろうか...
JRに限ったことではない、
日本の企業全般に対する警告書、にも思えました。

